「ビッグコミック」(小学館)で昭和43年から40年以上にわたって連載されている人気漫画
「ゴルゴ13(サーティーン)」。謎に包まれた超A級スナイパー(狙撃手)、デューク東郷の奇跡のような
狙撃を描き続けているが、殺し屋を主人公とするこの作品が、なぜここまで支持されているのか。
人気の秘密と製作の裏側を、作者のさいとうたかを氏(75)らに聞いた。
10話で終わるつもりが
ゴルゴ13ことデューク東郷は、驚異的な狙撃の腕前を誇る殺し屋。一切の思想信条と関係なしに、
世界を舞台に、依頼された人物を確実に暗殺する。暗殺依頼の背景にあるのは、国家間・企業間の紛争、
テロリズム、組織犯罪…と多種多様。単行本(SPコミックス版)は昨年12月に第163巻が発売され、
文庫版などを含めると累計2億部以上を記録している。実写、アニメで計3回映画化され、
平成20年にはテレビアニメにもなった。
また、昨年秋にはハリウッドが映画化権を取得したことが米誌で報じられている。
さいとう氏は「ストーリーとしては単純なので、10話程度で終わるつもりだった」と
連載開始当時を振り返る。「それがずるずる続き、ついにはこんな長期連載になっただけ。
青年誌での連載なので、殺し屋が主人公でも受け入れられると思った」という。
設定にはリアリティー
ビッグコミックの西村直純副編集長(44)は「ゴルゴはうちの雑誌の看板であり、
アイデンティティーだ」と言い切る。その魅力については「『困難な状況を堪え忍び、精密な狙撃を
やりとげる日本人』という設定はリアリティーがあるし、痛快。キャラクター設定がいい」と語る。
毎回のエピソードには、スパイ小説を思わせるような大量の情報が詰め込まれている。
これについては、さいとう氏の指揮のもと、分業による製作体制に負うところが大きい。
ストーリー作成は、ビッグコミック編集部が抱える約10人の脚本家集団が担当する。
「専業のライターもいるが、元銀行マンや国家公務員、ペットショップ経営者など、
副業でやっている人も多い」と西村副編集長。
脚本はさいとう氏によって厳しいチェックを受ける。
「臓器売買など人を不快にさせる題材は嫌い。また、“その時代の善悪”で書いたものもダメ。
作品がすぐに色あせてしまう」と、さいとう氏。「最近はゴルゴ13を読んで育った人も多いので、
物語の“お約束”をきちんと理解してくれている脚本家が多い」とも話す。
用意されている最終回
脚本と作画に関しては徹底した取材が行われる。
かつて、ゴルゴが蝶マニアのターゲットを珍種の蝶でおびき出すエピソードが描かれた際は、
「世界で3例しか目撃例がない蝶の羽の裏」を描く必要に迫られ、
編集者たちが血眼になって文献をあさったという。
「どうしても見つからず、結局きわめてよく似た蝶を見つけ、アレンジして描いたと聞いた。
とにかく最後まであきらめずに調べている」と西村副編集長。
実は、ゴルゴにはすでに最終回が用意されている。10回で終わるはずだったため、
開始当初にさいとう氏が決めていたのだ。
「コマの細部まで全部決めてあるが、原稿にはしていない。いつ連載をやめるのかは、
僕ではなく、読者と出版社が決めること」
気になるその内容を尋ねたが、さいとう氏は「もちろん、教えられないよ」と答えた。
MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/120116/ent12011610000006-n1.htm