自ら関係各所に働きかけ、未DVD化の憂き目にあっていた時代劇の傑作、東宝版映画
「次郎長三国志」シリーズのDVD化を実現させたスタジオジブリ・鈴木敏夫プロデューサーに
話を聞いた。東日本大震災後の日本映画の方向性について「戦後邦画のテーマであった
“貧しさからの脱却”が今こそ必要」と分析する鈴木が、宮崎駿監督による次回作の方向性を
教えてくれた。
かの有名な清水の次郎長を主人公に、娯楽映画の巨匠・マキノ雅弘監督によって全9作品が
製作された傑作時代劇と名高い同シリーズ。スカパー!ケーブルTV・ひかりTVほかで放映中の
日本映画専門チャンネルでは、12月4日(日)午後1時より全9作品をハイビジョン放送する。
同時に特別企画としてテレビドラマ「北の国から」、映画「最後の忠臣蔵」で知られる杉田成道監督と
鈴木による対談番組も生放送でお送りする。
今年10月下旬からDVD化された同シリーズだが、驚かされるのはそのジャケットイラスト。
何と「ONE PIECE」の原作者である尾田栄一郎が手がけているのだ。「ラジオ番組で対談する
機会があって、尾田さんはビデオで観て以来どっぷりハマったと言っていました。彼は
昭和2、30年代のチャンバラをリアルタイムで観ている僕に嫉妬するくらい時代劇が好きでね」と鈴木。
その影響は作品にも顕著だそうで「コミックを読んで思ったのが、『ONE PIECE』は次郎長そのもの
だということ。彼に聞いたら、その影響をあっさり認めていましたよ」と驚くべきエピソードも。
ラジオ共演後に未見の回のビデオを尾田へ送り、その流れからDVD化に際してのイラスト執筆の
流れができた。時代を象徴するクリエイターには共通点があるという鈴木は「それは温故知新。
姿かたちを変えて古いものを新しいものとして見せる。その素晴らしい才を持つ尾田さんは
ただ者ではない」と舌を巻く。
2011年は、クリエイターはもちろんのこと日本という国に生きる人間すべてに影響を与える
出来事が起きた。3月11日に発生した東日本大震災がそれだ。鈴木は「僕としては衣食住に
事欠く人が、近い将来生まれようとしている気がします。そんな現実に対して、映画が語るべき
テーマも必然的に変わらなければダメでしょうね」と断言するが、そこで気になるのがジブリの
方向性だ。情報解禁前であることから多くは語れないとしながらも、宮崎監督の次回作は
「観客の全員が安心して観られるようなものではない作品」になるとのこと。この決意について
鈴木は「震災が影響しているわけではなく、現在の日本の状況というのは企画段階からすでに
予測していました。ですから、リアルなものを作りたいという思いがあります」と意図を説明した。ハリウッドチャンネル
http://www.hollywood-ch.com/news/11112701.html?cut_page=1