今年9月に発行された、(財)デジタルコンテンツ協会の『デジタルコンテンツ白書2011』に
よれば、2010年の国内のコンテンツ産業の市場規模は12兆641億円とされており、前年比0.8%
減だ。震災の余波を受け、今年の市場規模はさらに縮小していると予想される。いずれにせよ、
国内のコンテンツ市場は07年の13兆2,450億円をピークに減少が続いている。こうした中、海外
に新たな市場を求めるのは必然ともいえるだろう。
今回は、10月27日・28日の2日間にわたって東京・秋葉原UDXで開催された「東京国際アニメ
祭2001秋」(主催:経済産業省/一般社団法人日本動画協会、後援:東京都)の「アニメ ビジ
ネスマッチング&カンファレンス」を軸に、海外市場の展望について記していく。イベントの
活況については、後藤勝氏が詳しくリポートしている(参照記事)ので、こちらも参照してい
ただきたい。
27日に開催された「アニメーションのヨーロッパマーケット事情と、日本作品の世界市場に
おけるトレードギャップ」「海外のファン、マーケットの動向」の2つのカンファレンスでテー
マとなったのは、日本のアニメ産業が海外で市場を獲得していくために必要な、市場となり得
る国々の歴史と現状であった。
そもそも、このタイトルでカンファレンスが設定された背景には、2011年5月に経済産業省の
「クール・ジャパン官民有識者会議」で提言が取りまとめられたことがある。ここでは、具体
的な施策として国際共同製作の推進、国際事業展開をプロデュースできる人材の育成、必要な
資金や人材の供給、海外情報収集体制の強化などが示されている。
近年ではヨーロッパ、特にフランスを中心に日本のアニメは大きな市場を獲得しているとさ
れるが、その背景や現状は明らかではない。「アニメーションのヨーロッパマーケット事情と、
日本作品の世界市場におけるトレードギャップ」では、モデレーターの江口美都絵氏(東京国
際アニメフェア渉外担当プロデューサー)を除き、登壇者が外国人という顔ぶれで、ヨーロッ
パ各国のアニメ産業の現状が語られた。
結論からいえば、ヨーロッパにおいて日本のアニメ産業は、市場としてはいまだ開拓国あり、
現地では日本側との共同製作に大きな可能性を見出しているといえる。登壇した、イタリアア
ニメーション協会プレジデントのAlfio BASTIANCICH氏によれば、ヨーロッパ全体では約300の
制作会社があり、市場規模は7億ユーロあまり。製作数はテレビアニメが年間放映時間で750時
間分、さらにアニメ映画が年間15本程度だという。
もとより、いくつもの国が近接しているヨーロッパではアニメの市場は国際色豊かなもので、
アメリカで製作されたアニメも含めた市場を形成している。ところが、日本のアニメ市場はこ
の中には入っていない。ヨーロッパにはインターナショナル(ヨーロッパ各国とアメリカ)な
マーケットと日本のマーケットの2つが存在する。日本のアニメだけを扱ったメディアに象徴さ
れるように、「従来のアニメとか価値も市場もすべて別のもの」として捉えられているのだ。
この市場の分断を国際共同製作の実現によって、解消していきたいという意図が登壇者たちに
は共通していた。
また、フランスのCedric Littardi氏(KAZE代表取締役社長)は、日本のアニメの長所として
ストーリー性の強さを挙げる一方で、日本には外国人との共闘が難しい文化があるために市場
を失っていると指摘。新たな市場を開拓するためにもヨーロッパでの共同製作を訴えた。
http://www.cyzo.com/2011/11/post_8983.html>>2以降に続く